今回は2024年6/10~6/12の三日間三重県大紀町で行われた日本ケイビング連盟の合同講習会に参加した時の記録を書きたいと思います。

今回初めての日本ケイビング連盟の講習会参加となります。全国からケイビングガイドが集結するということで、講習前からワクワクとドキドキが止まりませんでした。

主な活動内容

今回は主に二日間にわたる講習内容を2チームに分かれて実地致しました。

・新ツアー開拓のための新洞探索、発見した洞窟の概念図の作成

・洞窟内でのレスキュー訓練、搬送方法の実践

※新洞探索では竪穴という事前情報があったため講習前に、竪穴洞窟に行くためのSRT(シングルロープテクニック)の習得、ロープ上で自力で行動不能となった要救助者を吊り下ろし安定した平場まで救出する技術
オンロープレスキューを実践しました。

愛知県一宮市にある地球探検社にて合格ラインでもある7分以内でのオンロープレスキューに成功しなんとか竪穴の洞窟探検に参加することができました。

以下活動報告となります。

新洞探索、レスキューを想定した事前準備

ますは講習前の事前準備からスタート。
今回講師でもある元気商会の縣さんから事前に渡されたざっく洞窟があるエリアを記された地図から
アクセス、ルートを考え実際に洞窟がありそうなポイントをマーキング。

また電波の無いエリアでの活動も予測されるのでスーパー地形のアプリをダウンロードし
予め探検エリアの地図を一括ダウンロードしました。
僕は現場ではGeographicaも利用。

チームは2班に分けられ僕らはBチーム。沖縄支部のビックビーチの大浜さんも同じチームでした。
講習前からすでにもう講習は始まっていて、ライングループを作り、まずはリーダ、副リーダーの選出、
竪穴洞窟の探検、レスキューを想定した、団体装備と個人装備の選定を皆でチームのメンバーで意見を出し合い行いました。

リーダは鹿児島支部、沖永良部島のよしきさんに決まり、行動計画や皆の意見をまとめて頂きました。

僕らBチームは下記の装備です。

【個人装備】

ハーネス
予備のヘットライト
行動食+水分
ケイタイ
モバイルバッテリー
クマスズ
カラビナ
シュリンゲ
エイドキット

【団体装備】

スタティック 30〜50メートル×2(10ミリ)
ダイナミック 20〜30M×1 (8ミリ)
シュリンゲ  60×2
       120×2
       180×2
ウェビング ×2
ドリルセット (ボルト、ハンガー、ハンマードリルセット 小型ハンマー)
カラビナ 10+α
トランシーバー×3
プルージックコード×4
プーリー×2
プロテクター×2
ジップロック
測量レーダー、ペン、ノート
熊スプレー

探検活動を行うのは三重県の大紀町の里山で、ヒルやマダニはもちろん、クマの恐怖もあるということで
熊よけの鈴やスプレーなども必要になりました。

普段熊の心配がない離島での活動のため熊のリスクがすっぽり抜け落ちてしまっていたので、
僕らが行くのは本州の山だということを再度認識し身が引き締まりました。

実際に洞窟での活動でこういうギアがあった方が良かったという点があったので
後ほどまた書きたいと思います。

行動計画

8:00 山のリズム集合
9:00 山のリズム出発
9:15 駐車場予定地 探検スタートポイント
13:00 までに穴を探す
16:30 出洞
18:00 までに車に戻る
18:30までに連絡なければレスキュー

講習1日目新洞探索

いよいよ8時に集合山のリズムさんに集合し、Bチーム初の顔合わせです。
久々の再会や初めましてメンバーも沢山いて会話が弾みました。

全体ミーティング、挨拶が終わると個人装備、団体装備の最終確認と準備をします。
団体装備はチームみんなで分担して運びます。

講師の縣さんから岩にアンカーを設置するさい残地せず回収できるクールパルスの説明を受けました。
世界自然遺産に指定されている西表島ではなかなかドリルを使って岩などに支点を作るのは
難しいのでなかなか実践で試す機会がないというのは探検活動において今後の課題になりそうです。
ただボルトを残地せず持ち帰れるのはとても良いなぁと思います。

出発前にルートの最終確認。おおよそ洞窟のあるであろうポイントに目安をつけ、
ポイントまでの歩くルートの確認。
今回は沢沿いに歩き行けるところまで歩き、滝や登りがきつくなる場合は
尾根に上がり、尾根沿いを歩こうということになりました。

地図を見て実際の地形などをどれくらい予めイメージできるかが重要だとこの後の探検で
思い知らされることに‥‥。

予定出発時刻から遅れること約1時間ほど10時に車の駐車予定地から探検開始、
初めは沢沿いに歩くが、滝が出現したため、滝を左に巻いて尾根を登ることになりました。
しかし目的地よりだいぶ左にずれてしまったため軌道修正するのにかなり時間がかかりました。

普段登山はあまりしないメンバーで尚且つ道なき道を行くのでルート選びも難しく
想像以上に疲労が溜まります。

2時間以上山を歩きなんとか稜線に到着。ここからようやく洞窟探しができます。
石灰岩の岩が沢山ゴロゴロしていて皆疲れた体も吹き飛びテンションが上がってきました。
目星をつけていたエリアもすぐそば。それぞれ山の斜面に沿って横に広がり洞窟を探し始めます。

洞窟を探してしばらくするとリーダから(洞窟あったよ〜)という声が!!
その瞬間皆テンションは爆上がり疲れが吹き飛ぶ瞬間でした。
穴を見つけたらいよいよ竪穴を降りる準備をします。

リギングはリーダのよしきさんが行います。僕はそのサポートでした。


セッティングが終わるといよいよドキドキの入洞です。
今回は洞窟内部にも支点を取っているので実践洞窟での初めてのリビレイでした。


無事チーム全員が降りることに成功しました。
しかし洞窟発見に時間がかかりすぎて洞窟内部をくまなく探索する時間はなく
途中で断念。僕がこの先はないと思っていた穴が実はまだまだ先が続いていたことを別のチームが
作成した地図を見て後で知り、
とても悔しい気持ちになりました。また同じ洞窟に行きたくなりましたが、この時は洞窟を発見したこと、
無事SRTを駆使して洞窟内部に入ることが出来たことに満足していました。


洞窟の見取り図の作成が終わったら今度は登り返し、最後は大浜さんがアンカーとロープの回収をしてくれました。

この後無事下山できましたが、下山予定時刻より1時間以上遅れ日没ギリギリになってしまいました。

ただ終わった後の達成感はかけがえのないものになりました。

講習2日目レスキュー訓練

講習2日目はBチームはレスキュー訓練を行いました。


洞窟に行く前にまずはロープでの簡易的なストレクチャー作りを行いました。ロープの末端にオーバーハンドで4つほど輪っかを作りそこからロープをくぐらせさらに輪っかを作って網のようにしていきます。
両端をオーバーハンドで固定し輪っかは小さめにすることによってロープが伸びず人を乗せ安く
なりました。ロープがあればできる簡易的なストレッチャーの作成を学びました。


二日目は吉田隊長と竹中さんと合流。いよいよ実践洞窟でのリアルレスキュー訓練が始まります。

洞窟は三重県にある山のリズムさんでお馴染みの阿曽の風穴。水脈をほふく前進で進んで行きます。

一通り洞窟内の把握を終えると、ザックとシュリンゲを使った搬送の仕方を皆で試しました。
ゲガをし歩行困難になったゲストの方をザックの間に挟みザックごと背負い込み運ぶ方法です。
ゲストを背負い込んで1人で立ち上がるのは難しいですが、立ち上がりさえすれば、かなり安定して
傷病者を運ぶことができます。
これは西表島のフィールドでも使えそうです。

次に行ったのが、ザックを三つ繋ぎ合わせて簡易的なストレッチャーを作り傷病者を固定して
運ぶ方法です。こちらは人数が必要になりますが、狭い場所を通る洞窟ではかなり有効でした。
リアルな探検の現場では、ストレッチャーなど基本レスキューに必要な物は持ち合わせてないので
必要最低限な装備でセルフレスキューを行うことが求められてきます。


いよいよチームでのリアルレスキュー訓練の開始です。
今回の想定としては探検中足を骨折した要救助者を時間内に無事洞窟の外に出すという内容です。

単純な横穴洞窟ではなく、複雑で危険な道のりを限られた装備でシステムを組んで要救助者を洞窟の外まで出します。

まずはリーダーを中心に皆で話し合い、それぞれ役割を決めて実際にシステムを構築します。

2次災害を起こさず安全に運ぶにはどうしたら良いか?どこにアンカーを打つべきか?
要救助者を安全に楽に高い場所に上げるには?

考えるだけでも時間が過ぎ去っています。この日も朝から洞窟に入りましたがお昼ご飯を食べるのも水を飲むのを忘れて没頭してました。

まずは救助者が安全に作業を行うためのロープを張り、カウンターウエイトで要救助者を高い場所へ持ち上げます。
さらに倍力を使って要救助者を引っ張る。チームのメンバーそれぞれ役割を持ちなんとか難所を超えていきます。

カウンターウエイトやバイリキシステムで引き上げる際アンカーにプーリを付けますが、
万が一ロープから手が離れロープが流れないよう、マイクロトラクションを使用するとしっかりロープに噛みストップしてくれるのでとても便利でした。
マイクロトラクションはたまたま竹中さんが個人装備で持っていたので助かりました。

洞窟内ではロープがドロドロになり滑りやすくなるのでプルージックは聞かなくなる可能性があり、
タイブロックやマイクロトラクションなどのギアがあればかなり安心で便利だということを学びました。
今後のギアの参考にしていきたいと思います。


足場の悪い場所はチロリアンで運搬、ミスると大怪我に繋がるので、助けられる役も、
ビレイロープを握る手にも緊張が走ります。

最後はなんとか狭いエリアを無事通過し洞窟の外へ。
洞窟を出た頃には日が傾いていました。

探検、レスキュー訓練を終えて

レスキュー訓練を終えて率直な感想としては何も出来なかった…という思いが残ります。
大事な場面ではやはりリーダーや縣さんに頼ってしまった。
どんなロープワークもシステムも知ってるだけではもちろんダメで、ただ練習してるだけでもダメ、
やはり実践で経験し得たスキルでなければ、実際の現場では使えないなぁということを実感しました。
劣悪な環境下では上手くいくことばかりではなく、予期せぬトラブルも起こり得るわけで、その経験一つ一つが
大切だなぁと思います。

ガイドとしてゲストを連れてフィールドに行く以上やはり皆リーダをできなけばなりません。
探検も含めてチームで動く場合は、皆リーダーも出来るがその上で与えられたポジションをまっとうする。
時には陽気に歌ったり盛り上げたりするのも立派な役割だなぁと感じます。
探検の時の大浜ニィニィとゆかりんさんは持ち前の明るさとお喋り上手もあり終始凄かったです。
体力的にも精神的にも苦しい場面で助けられました。

今後さらに高い意識とレベルでまた活動ができるようこれからも頑張ります。

探検を極めれば自ずとレスキュースキルも身について来るという縣さんの言葉が心に残ります。


二日間研修の後は夜も宴会!?のような談義が続きます。それぞれ各事業所の取り組みや戦略など勉強になることが山ほどありました。

三日目の講習には僕は私用のため参加出来ませんでしたが、実践的な合同訓練に参加することができて本当に良かったです。

今回企画運営して頂いた理事の皆さん、そして場所を提供、アテンドして頂いたヤマノリズムさんには感謝でいっぱいです。

また新しい仲間に出会えたことを嬉しく思います。

良い時間をありがとうございました。

また皆に会えるのを楽しみにしております。

それではまた次回をお楽しみに。